猟奇的ゆとり虚言癖

よくお前ほど普通の人はいないと言われます。

人狼ゲームとは愛し合うゲームである。

人狼ゲームをやった事がない人には、やる前に知っておいて欲しい。

人狼ゲームをやった事がある人には、改めて知ってほしい。

人狼ゲームは人を疑うゲームではなく、愛し合うゲームだと言うことを。

 

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 プロローグ

貴方はこの村で木こりをしている青年だ。

村は森に囲まれていて、その森には二匹の人狼が住むという

そして今日、全身の皮が剥ぎ取られ、ぐちゃぐちゃになっている遺体が二つ発見された。

二匹の人狼が今日、村に紛れ込んだらしい。

 

 

一日目【残り十二人】

自分が村人なら、きっと不安に駆られるだろう。

もしかしたら自分が人狼と疑われてるかもしれない。

もし人狼と間違われて処刑されたら...

生き延びたとしても夜、人狼に食べられてしまうかも...

 

そんな時、人は疑心暗鬼になって

自分さえ助かればいい!

人がどうなろうが関係ない!

処刑されたくないんだ!

と心に狂気が宿ってしまう。

 

そんな人達が集まり人狼を処刑出来るだろうか

 

否。

 

他人を罵り、根拠もなく人を責めて、人々の罵声の中、一人の処刑者が決まる。

しかし結局処刑した奴は人狼だったのかもわからない。

処刑される前、彼は言った

 

「みんな、変わっちまったな...」

 

果たして自分は正しかったのだろうか

あの場面でどうする事ができたっていうんだ

自分を責め、人を責め、自問自答を繰り返す。

 

そして夜に仲間が一人喰われる。

 

きっとそうして一日目を終えるだろう。

 

 

二日目【残り十人】

二日目の早朝、占い師を名乗る如何にも疑わしい人物が現れる。

疑わしいのもそのはず

今まで一緒に村で暮らしてたなんの変哲も無い村人が、急に占い師だと言いだしたら信じるだろうか

 

否。

 

しかし、貴方はこの人物をとりあえずは信じるしかない。

何故なら人狼はわざわざ占い師という疑われるような事を言う必要はないからだ。

占い師なんて矢面に立つことをしなくても村人のふりをしてれば良い。

つまりこの人物は本物の占い師

あるいは頭がおかしくなった村人である。

 

しかし、この説はあくまで人狼が占い師という存在を知らなかった場合に限る。

もし占い師の存在を知っていたなら、きっと賢しい人狼は先に自分が占い師だと名乗り出ることだろう。

 

この占い師はある人物が人狼ではなく村人であると証言する。

この事である人物は、占い師に絶対の信頼を置くことになる。

それもそうだろう

自分が処刑されるかもしれない所をこの占い師のおかげで免れたのだ。

しかし議論はそれ以降進まず、結局疑わしいというだけで仲間かもしれない者を処刑してしまう。

「疑わしきは罰せず」という言葉が脳裏によぎるのを必死に押さえ込みながら貴方は床につく。

 

 

三日目【残り八人】

翌朝、衝撃が走る。

占い師から村人だと言われた人物が、見るも無惨に喰い荒らされていたのだ。

この事により、占い師はこの村で絶対の地位を築く。

しかしここで

 

「みんな騙されるな、本物の占い師は私だ」

 

と言う者が現れる。

しかし誰も信じてはくれない。

何せ、先の占い師は村人だと言った者が人狼に喰い殺されているのだ。

ある村人は冷ややかな視線を向け

ある村人は激昂する。

村人は新たな占い師に罵声を浴びせ、今日の処刑者をこいつにしようと言い始める。

 

「ちょっと待って下さい!」

 

村人の罵声の中、少女が声を張り上げる。

 

名をルイーズ

後の占い師の婚約者だ。

 

「彼は人狼なんかじゃない!みんな知っているでしょう?」

 

彼女は泣きながら訴える。

 

人狼っていうのは見た目は人間そっくりなんだ、きっと化けてるんだ」

 

そうだそうだと村人たちが口々に言い合う。

 

「違うわ!私はわかる、彼は彼だということを!」

 

後の占い師が消え入るような声でつぶやく

目には、いっぱいの涙を溜めて。

 

「すまない、ルイーズ」

 

それが彼の最後の言葉だった。

 

その夜、ルイーズは人目につかない裏路地で人狼を誘き寄せるため手にナイフを当てた。

真っ赤な血が腕を伝う。

 

「彼のいないこの世に未練はないわ...」

 

 

四日目【残り六人】

占い師は声高に言う。

 

人狼を見つけた!」

 

そして貴方は人差し指を向けられる。

貴方は目の前の占い師を見て愕然とするしかないだろう。

 

村に伝わる情報により森には二匹の人狼が潜んでいる事が分かっている。

ここにいる村人は全員こう思うだろう。

昨日一人、人狼を処刑した。

そして後一人は占い師が教えてくれた。

つまり貴方を処刑すれば、この村に平和が訪れる。

 

終わった...この村は、人狼に喰い尽くされる。

そんな時、一人の青年が声を上げる。

 

「それは違う」

 

レイモンド...

 

幼い頃からずっと一緒だったレイモンド...彼は村一番の切れ者であった。

しかし、この状況ではもうどうしようもない。

私はレイモンドに諦めの視線を送る。

その視線を受けて彼は真剣な表情から少し口角をあげた。

そして、言う。

 

「俺は霊媒師だ!」

 

村人全員が固まる。

霊媒師、それは死んだ者の正体を見破る能力者。

 

レイモンドは続ける。

 

「昨日処刑した占い師は人間だった、つまりお前は偽物...人狼だ」

 

村人が静まり返る中、占い師が小さく笑った。

 

「フフッ...そうか、霊媒師か!」

 

「そうだ」

 

「誰が信じる!こいつは人狼だ!嘘をついている!!」

 

占い師が声を荒げる。

周りの村人はどうしていいかわからない。

 

「そうか、俺が人狼か...じゃあ昨日処刑された占い師と、今日お前が人狼だといった彼はどっちが人狼なんだ?」

 

その言葉に皆がざわついた。

しかし、その喧騒は一瞬にして破られる。

 

「レイモンドは嘘を言っている、私が霊媒師よ」

 

「何だと?!」

 

レイモンドが驚愕する。

視線の先には

 

「...クリストファー」

 

彼女はつい最近、レイモンドに振られていた。

それからずっと貴方を恨んでいた。

レイモンドが愛する、貴方を。

クリストファーは続けざまに言う。

 

「私が霊媒師!レイモンドは人狼を愛する裏切り者よ!」

 

「クリストファー、そんなに俺が憎いか」

 

「えぇ憎いわ、とっても...でも良いの、人狼を処刑して貴方と二人っきりになれればそれでいい」

 

「クリストファー、もうやめてくれ」

 

 

村に静寂が流れる。

言葉を発する事も、誰を処刑するべきかの判断も全く何も出来ないでいた。

そんな中、ある人物が言葉を発する。

レイモンドだ。

 

「みんな、聞いてくれ...」

 

レイモンドの声に、皆が縋るように息を飲む。

 

「昨日の夜、ルイーズが死んだ...彼女は人間だった!人間の言葉を信じるべきじゃないのか!」

 

村人たちは狼狽しながらも呟き始めた。

 

「そうかもしれない、俺たちは彼女の言葉を信じなかった」

 

「そのせいで二人とも殺してしまった」

 

「そうだ、俺たちは愛する二人を...殺したんだ」

 

村人たちの視線が一点に集まる。

 

「おい...まさか...」

 

占い師は処刑された。

最後は狂ったように言葉にならない言葉を発しながら。

 

そして人狼ゲームは終わりを迎えることになる。

 

その夜、クリストファーの恨めしそうな視線に貴方は思わず涎が垂れてしまうことだろう。

翌日、貴方は残った村人を喰い尽くす。

 愛するレイモンドと一緒に。