私がアカデミー賞を取るに至った経緯
ポストに真っ白な封筒が届いた。
差出人は、ハリウッドか...
私はそれを半分に破り、重ね、また破り、を繰り返してバラバラになったそれを自分の頭上にぶん投げた。
紙吹雪が、私を覆い尽くす。
ひらひらと舞い散る文字をもれなく読み解き、私は手紙の内容を瞬時に理解した。
なるほど、アカデミー賞に選ばれたか
数日後、私はハリウッドにいた。
アカデミー賞の授賞式には大量のマスコミやファンで溢れ返っている。
皆が待っている中、レッドカーペットの前に一台のリムジンが止まった。
その後部座席からジョージ・クルーニーやリュック・ベッソン、ベン・ジョンソンなど有名ハリウッドスター達が降りてくる。
周りの群集が湧き上がる中、ついに私がリムジンから姿を現わす。
瞬間、先ほどまでの盛り上がりが嘘のように場が静まり返った。
まるで時間が凍ってしまったかのような静寂。
そんな中、誰かが言った。
「ナ、ナカノシマ...」
刹那、喝采の嵐が吹き荒れた。
ナカノシマコールが始まり、右から左、左から右へとウェーブが起こる。
群集を警備員が必死に止めているが、破られるのも時間の問題だ。
私はサングラスを外し、天使の微笑みスマイルを向けると、あまりの天使さに人々が恍惚の表情を浮かべ失神する。
これがハリウッドスター、ナカノシマである。
アカデミー賞授与式が始まり、私は主演男優賞、監督賞、抱かれたい芸能人ナンバーワンなどを総ナメにした。
私が壇上に上がると、おじいちゃんが豪奢な2メートル強はあるトロフィーを私に渡す。
溢れんばかりの歓声、止まない拍手喝采、美女達の抱いてコール。
それを天使の微笑みスマイルで抑え、私は流暢な英語で感謝の意を示す。
「アイム、ナカノシマ」
その一言で、ファンやマスコミだけでなく周りのハリウッドスター達もが涙を流した。
生い立ちから読み取れる人生観
好かれに好かれる人間性
あまりに感動的なアカデミー賞を取るに至った経緯
その全てがネイティヴでバイリンガルなイングリッシュによるスピーチで皆の心に染み渡ったのだ。
人々が口々にナカノシマ、マイエンジェルと呟いた。
その光景が全国に放映され、全米がマイエンジェルになる。
ナカノシマ、マイエンジェル。
ナカノシマ、マイエンジェル。
ナカノシマ...
...朝か。