猟奇的ゆとり虚言癖

よくお前ほど普通の人はいないと言われます。

メレンゲの気持ち

この世に、生まれるはずだった。どこで間違えたのだろう。

いや、最初から決まっていたことなのかもしれない。

 

私が意識を持ったのは奇跡としか言いようがない。この世に生まれる前から私は、私がここに存在していることをはっきりと認識していた。

無骨な手が、まだ孵化してない私を取り上げた。私の仲間たちも次々とその手の中に収まる。綺麗に並べられた私たちは次の目的地に向かうようだった。

 

彼女は陳列された私を見つめていた。綺麗な人だった。私は初めての恋をした。

だから、彼女に貰われて幸せの絶頂にいたのだ。

彼女は結婚していて、それは左手の指輪が示していた。

しかし、それでも構わない。たとえ叶わなくとも、この恋心に嘘はないと心に誓った。

彼女に連れられ玄関を抜けると、ふわっといい香りがする。ここが彼女の家か。

所々に飾ってある写真から仲睦まじい夫婦の関係が伝わってきて、なんだか彼女に恋をしているはずの私まで二人の幸せを祝福したくなる。ここは天国より天国のようだ。

彼女は手を洗うとエプロンをつけた。

どうやら料理をするようだ。きっと旦那さんに食べさせてあげるのだろう。

旦那さんが羨ましい。こんな綺麗で優しいお嫁さんがいて。

彼女はビニール袋から私を取り出し、手のひらで持ち上げる。

彼女の手はとてもあったかい。このまま幸せに包まれて、イタイッ

不意に側頭部に衝撃を受ける。

 

な、なんだ...!?

 

私が混乱の中、目にしたのは彼女の微笑み。

 

ガン

 

さらなる追随で私の側頭部は完全にヒビ割れ、さらに指を突っ込まれ私の中身がでろんっとでてくる。

 

痛いッ、やめてくれ、なんでこんなこと...!!!

 

さっきまでの優しい笑顔が、悪魔の冷笑に見える。

ただプルプルと震えることしかできない私に、悪魔は無情にも素手で黄身と白身を引き剥がしにかかる。

 

ギィィィあァァぁぁあぁあ嗚呼アァあッッ!!!!

 

絶叫、阿鼻叫喚、咆哮。

今まで経験したことのない痛みに、全身が打ち震える。

未だ嘗てこんな残酷な仕打ちができる動物がいただろうか。

いるとするなら、それは人間だけだ。

 

悪魔がにんまりと私を見つめる。

手にしていたのは、どう見ても拷問器具。

殺されるより最悪が、ここにはあった。

 

キュイイイン、キュイイイン

 

けたたましく回転する2つのサイクロンが私に迫る。

内臓や脳みそをぐちゃぐちゃにする想像に容易い醜悪なる器具。

その粘り気の多い狂気が私をかき回そうとするのか、彼女はただ普通に殺すことに飽き飽きしている。

悪魔など生ぬるい。

この世の全ての憎悪と快楽の塊。

それが彼女である、

 

 

                                       ーー土曜12:00より放送