猟奇的ゆとり虚言癖

よくお前ほど普通の人はいないと言われます。

もしも、桃太郎が鬼の子だったら

むかし、むかし、世界は鬼たちが支配していました。

しかし人間が鬼を殺しまくり、鬼は絶滅危惧種並みのピンチに陥りました。

そんな絶体絶命鬼ヶ島では、鬼の親分と人間との間に赤ちゃんが生まれました。

禁断の愛で生まれた奇跡の子供。

鬼の親分は、何を思ったか赤ちゃんを桃に詰めると、川へ流そうとしました。

この子供に鬼の未来を託そうと想いを込めて。

しかし、赤ちゃんが入った巨大な桃は重くて全く水に浮かず、川の底で微動だにしませんでした。

親分は、仕方なく川に入り桃を持ち上げました。

まるで川に流されているように抑揚をつけながら

 

どんぶらこ、どんぶらこ

 

と桃を運びました。

赤ちゃんが入った桃は、ある村の老婆に拾われました。

側から見ていると、川に入った鬼が老婆に巨大な桃を渡している様にしか見えませんが、老婆は自身の腕力のみで桃を川から拾い上げたと思い込めるほどに老いていました。

老婆はその桃を食そうと推定30kgほどある桃を、気合いと、根性と、貧困に対する積年の恨みで、なんとか自宅まで持ち帰りました。

運ぶ時に、親分が桃の反対側を持っていたことも大きな支えになりました。

 

家につき、桃を切ろうと包丁を手にした老婆が、流石にずっといる鬼の親分の存在に気がつきました。

 

「お爺さんや、芝刈りはおわったんかね」

 

「あぁ、終わったよ」

 

それを聞き、老婆は先ほど巨大な桃が川上から流れてきたこと、その桃が推定30kgはあったが結構楽勝で持ってこれたことなどを親分に話しました。

老婆が話しながら桃を切り分けていると、中から赤ちゃんが出てきました。

しかし老婆は、自身の筋力がまだまだ衰えていないという話に夢中で赤ちゃんに気がつかず、包丁を側頭部に打ち込みました。

 

赤ちゃんは

 

「マジ、やっちゃっていいっスか?」

 

と側頭部に包丁が刺さったまま親分に聞きましたが、なんとか抑えました。

老婆は赤ちゃんが桃から生まれてきたと思い、桃太郎と名付けました。

 

その頃、鬼ヶ島では人間との血で血を洗う戦いが始まろうとしていました。

 

桃太郎はすくすく育ち、3年ほどで身長178㎝、体重83kgの筋肉の塊になりました。

その筋肉の塊が言いました。

 

「鬼退治?ガチやっちゃう感じなんで」

 

桃太郎は老婆の作ったきびだんごと鬼の親分が用意した最高の鎧と刀を持って旅に出ました。

桃太郎は犬、猿、キジの式神を召喚しお供にしました。

 

きびだんごは道中で捨てました。

 

桃太郎が鬼ヶ島たどり着くと、周りの海は血で真っ赤に染まり、鬼と人間の死体が重なりあって岩肌を覆い尽くし、波が死体にぶつかり海へ誘い込もうとしていました。

洞窟の奥では、鬼が一匹で奮戦しており、人間たちに金棒を振り下ろしていました。

それも長くは持たないと悟った鬼は、金棒を手から離し、不敵な笑みを浮かべました。

人間たちが鬼にとどめを刺そうと、刀を持つ手に力を入れたその時でした。

背中から貫通した刀がまるで腹部から生えたかの様に現れました。

人間はそのまま崩れ落ち、その後ろには桃太郎が立っていました。

 

「若、待っていましたぞ」

 

鬼はそう言うと、その場に倒れこみました。

 

「ありがとう」

 

桃太郎は鬼を抱え、静かに短刀を心臓に刺しました。

そして、周りを囲んでいる人間たちを皆殺しにました。

 

その後、桃太郎は人々に鬼ヶ島から生き延びた英雄として讃え称され、持ち帰った財宝で村を豊かにし、国を作りました。

山ではお爺さんの首が発見されました。

 

おしまい。